09 舞妓さん?芸妓さん?

09 舞妓さん?芸妓さん?

舞妓さん?芸妓さん?

 「舞妓さんと芸妓さんって何が違うの?」とか、芸妓さんのことを指して舞妓さん、と言う人を見るとなんだか心がざわざわ、複雑な気持ちになります。だってそれは、うなぎとどじょうぐらい違うからです。だから、今回は詳しく書いてみよう、の回。
 まずは見た目です。舞妓さんは、長い振袖にだらりの帯、そして華やかなかんざしとおこぼが揃って、幼いことを全身で表す格好をしています。例えば、成長の早い子どものために身長が伸びても着物の袖が伸ばせるしくみの「肩上げ」という縫い方。七五三のときなどに、子どもたちの衣装を見ると肩と袖に肩上げがされていますが、舞妓さんの着物にもこれがあって、お稽古着にも、雨の日に着る雨ゴートにもきちんと施されています。もちろんこれは飾りで、幼さの象徴としてのものです。
 そして、つけている「衿」には赤地に白い糸で刺繍がされていて、下級生の頃は刺繍が少なく、赤がたくさん見えて幼い感じですが、上級生になればなるほど刺繍の量が増えて赤が見えなくなり、芸妓さんの白い衿に近づいていく、という細かい工夫もあります。襟を見ればその子がどれくらいの経歴なのかなんとなくわかる、というもの。

「衿変え」

 一方、芸妓さんは大人の装いです。たもとも一般的な着物と同じ長さになり、刺繍の衿が塩瀬の白い衿に変わります。そのことから、舞妓さんが芸妓さんになることを「衿変え」と言ったり。足元も高いおこぼはもう履かずに下駄になります。
 そして、頭を地毛で結っていること。これも舞妓さんだけの特徴で、芸妓さんになると「島田」という結い方をしたかづらを被るようになります。自分の頭の形に合わせて土台からあつらえるこのかづら。大体1キロ弱ぐらいの重さで、毎月かづらやさんに結い直しに出したり、いろんな道具を使いながら自分で油をつけて梳いたり、なかなか世話の焼ける存在です。長時間被ると首を痛めるため、出張など長丁場の時は収納できるかづら箱を持参したり、いい感じの瓶にすぽっとはめて待機させたりしてなんとか仲良くしていました。
 格好以外の違いというと、やはり年齢ということになります。5年間の舞妓さん生活のうちに幼い装いがだんだんとしんどくなって、京ことばにある「くどい」という意味のえずくろしい状態になってくると、そろそろ衿変えしましょうか、という流れになります。
 それもきっちり5年というわけではなく、大人びていたり背が高かったりすれば早めの衿変えになることもあるし、逆にいつまでも幼い印象であれば少し長めに舞妓さんをしたり、と人によってタイミングは違います。頭皮が悲鳴をあげて、「もう日本髪が結えません! 早めに芸妓さんに!」という場合も。

芸妓さん

 舞妓さんの間、お座敷で披露する芸事は「舞」だけですが、芸妓さんはそうはいきません。そのために、舞妓の時分からお三味線にお囃子に一生懸命お稽古して自分の得意科目を作っておく必要があります。舞妓さんのように格好だけでは経歴が区別できませんので、芸妓1年目も10年目も見た目は同じ。甘えも失敗も許されにくくなります。
 それでも、このころから少しずつお座敷で素の自分を出す塩梅がわかってきたり、日本髪がないことでお昼間の自由が効いたりと世界がぐっと広がって、「芸妓さん」という職業として花街で生きることを実感する新鮮な毎日を過ごしていました。プレッシャーはたくさんあったけれど 。
 いかがでしょうか。これから芸妓さんと舞妓さんを見分けられそうですか? 勘のいい人だったら舞妓さんの芸歴までわかるはず。どうか、間違っても芸妓さんに「君は舞妓さん?」なんて聞きませんように!

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