2025年2月 如月 かため

知らなくても別に良いこと、でも、知るとより暮らしが豊かになる。

 こんにちは。Whole Love Kyoto(以下 Whole Love KyotoをWLK)スタッフの溝部千花です。

 今回は、先月の「よもやま / お正月号」の続きです…(前号が気になる方はWLKのサイト「読む」シリーズから読むことができます)。

 

 「正尚堂」という、着物まわりのありとあらゆるヴィンテージを扱っているお店が茶山駅、WLKのお店すぐにあります。着物×HANAO SHOESとを合わせた、WLK 新年の投稿に向けた撮影をするべく、正尚堂 店主のサノさん、スタッフのミナミさんと打ち合わせをしていたときのことです。

 花緒や着物をあれやこれやと見ていると「ごめんくださーい!」とお客さんがゾロゾロと来られました。

 

 若い娘さん、お母さま、おばあさまの3世代です。娘さんが手元に持っていた長細いカバーからは、なんと赤や金など豪華絢爛な帯が5本、6本 次々と出てきました(私は「帯を近くで見たい…話しかけたい…」という衝動をおさえ、大人しく隠れるのみ)。

 若い娘さんが、2025年1月の成人式で着る振袖を探し求めて、正尚堂にやってきたようです。

 かつて、お母さま、おばあさまが身につけていた帯に合う振袖を選びたいようで、ここからはサノさんとミナミさんの腕の見せ所。(良い意味で)チャカチャカとコーディネートが始まります。

 チャカチャカではありますが、無駄なく流れるように、です。

 

「これにはこう」「こうならこう」と、色や柄に合わせて帯に合う振袖や帯揚げ、帯紐を次々と出してくださいます。

 “古典的な着物、合わせ方”と“現代に合うカジュアルな着方”を知っている、センスあるお二人だからこそ、好みお伝えしつつ、お二人の流れに身を任せるのも吉です。

 気づけばお客さんとサノさんたちの間で「辻が花」というワードが飛び交います。

 若い娘さんが選んだ深い緑の振袖は、辻が花染めという技法で柄を表現されたものでした。

 かつて豊臣秀吉や上杉謙信など、武将が着る着物の柄はこの技法で絵(模様)が施されていました。

 江戸時代に入った頃、扇子などの絵描きが着物に絵を描いたことが始まりで、京友禅(手描き友禅、型友禅)が流行り出しました。

 絞って染めて、小さいものから大きいものまで柄を表現する辻が花染めと比べ、はるかに京友禅の方が表現の自由が効き、量産するにも効率が良く、京友禅の到来により辻が花染めは一度途絶えます。

 そして戦後、「辻が花染めを復活させること」を目的とした研究所が誕生し、京都の三宅八幡に一つの工房が残ります。絵絞り庵という工房です。

 ちょうど2024年の春にそこを訪れてから 辻が花染めを活かした花緒の開発をWLKで行なっていたところだったので、「今だ!」と思い、若い娘さんやお母さま、おばあさまに、その振袖の良さ、辻が花染めについて私が知っている限りのことをあれよこれよとお話ししました。

 知らなくても別に良いこと、でも、知るとより暮らしが豊かになる。

 私はそれが好きなので、娘さんが知った上で「これにします!」と決めてくれたことが なんだかとても嬉しく。「成人式 当日にまた会いたいね」と約束しました。

 いつか、辻が花染めの工房へお連れして 自分の振袖の価値を、生まれる手元を知って欲しいなと思います。

 

 

成人式でのスナップもサイト、SNSにアップされました。ぜひ、ご覧下さい。



2025.2 Chihana Mizobe

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