
夏次郎商店とこぎん刺し | 02
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青森の民芸、その代表格「こぎんし刺し」を知っていますか。
僕はそんなに知りませんでした。
最近の「こぎん刺し」は、洒落ててかわいい。
その“最近”の流れをつくった第一人者・夏次郎商店さんと
WLK の HANAO SHOES がコラボする
ということで、せっかくの機会なので青森まで行ってきました。
夏次郎のこぎん刺し鼻緒を HANAO SHOES にすげる企画。
会場は、弘前市(ひろさきし)のギャラリー CASAICO。
寒かったけど、行った甲斐がありました。
こぎん刺し作家・夏次郎さん(写真NG)と
お話した記録をここに公開します。
弘前のこと、こぎん刺しのこと、青森の伝統産業のこと など。
夏次郎商店とこぎん刺し | 01
「こぎん刺し」を家庭の時間に習う、青森
基礎知識「こぎん刺し」のルーツ。
「こんなのこぎん刺しじゃない」と言われた時代。
夏次郎商店とこぎん刺し | 02
結局、刺繍なんて、誰でもできる。
専門職が分業で作るから、付加価値がつけられる。
鼻緒・夏次郎の理由。
夏次郎商店とこぎん刺し | 03
知らなかった、HAMAO SHOES。
夏次郎さんとのお話会を終えて
結局、刺繍なんて、誰でもできる。
夏次郎さん:
多分、他の人達もやり始めてたと思うけど、みんな本流じゃないと言われていた。
それがだんだん分母が増えるに連れて、徐々にいろんな色があってもいいねっていう流れ。
酒井:
それってインスタの影響は、ありますよね。
みんな写真撮って、かわいいいねって言って、どんどんムーブメントが大きくなっていった。
夏次郎さん:
と思います。今はYouTubeもありますし、動画見れば誰でも出来ます。
あと、都内でも材料が買えるようになっていったので。
酒井:
材料?こぎんの針、違うんですか?
夏次郎さん:
ちょっと違います。
こぎんの針は普通の刺繍針よりでかいんですよ、先が丸くて刺さらない。
私はこぎん専用の広島針っていう針を使っています。
酒井:
針は広島なんですね。
夏次郎さん:
弘前にもこぎん針はたくさんあるんですけど、広島針の長さと細さ、リーチがぴったり。
私は好きですね、ちょうどいいんですよね。
こういう風に材料がいっぱい出てきて、みんなが使うようになればなるだけ種類も増えて。
私がオリジナルの布を作り出した時点で、津軽工房社さん(弘前)というラスボスみたいなところがあるんですが、
そこも多種多様な布を作り始めたんですよ。
ピンクや赤の布を自社制作し始めて、「こぎん刺し」界隈では布作りがトレンドになってます。
酒井:
「こぎん刺し」の小物が、流行っている昨今の状況を受けて、
夏次郎さんとしては、小物作るのをやめて、鼻緒に集中したということですね。
夏次郎さん:
はい。結局刺繍なんて誰がやっても行き着くところは天井が知れてるんです。
同じ道具、同じ柄を同じ材料で刺したら、どんなに上手な人でも行き着く先は皆同じです。
なので、これはプロの技だって明確なものは「こぎん刺し」の世界ではなかなか。
細かいものに刺すとか、工夫しないといけないんですけど 「こぎん刺し」って、あまり細すぎると織りと一緒になってしまう。
ある程度大きくないと手刺しの良さが出ないなって私は思うので、
もう他と差別化するには布しかないなと思って、織っていただくことにしました。
個人が布織ってくださいって機屋さんに言っても、 だいたい相手にされないんですけれど、播州織の会社の方はすごい親身になってくれました。
専門職が分業で作るから、付加価値がつけられる。
酒井:
鼻緒に集中してる夏次郎さんは、鼻緒自体の仕立ても自分でやってるんですか?
夏次郎さん:
いえ鼻緒の仕立ては、浅草の仕立て屋さんにお願いしてます。
酒井:
そうですよね、よかった。
やってるのかなと思ってビビりました。
夏次郎さん:
やろうとしたんですけど、あれは本当に職人さんでないとできないことなので。
でも、全部自分でやると“付加価値”って付けづらいんですよ。
鼻緒屋さん、仕立て屋さん、下駄屋さん、塗る職人さんって分業して一つのモノを作ることによって、正規の値段を付けることができるんです。
雑貨作っていた時代は、全部自分でやってるから半分商売にならないというか、
値段がつけられなくて。
酒井:
そうだったんだ。
僕は、その雑貨時代に夏次郎さんの存在を知りました。
3年に1度の芸術祭「青森トリエンナーレ」にデザインで関わっていた時、市役所の物知りの永田さんという方に夏次郎さんのことを教えてもらいました。
夏次郎さん:
そうなんですね。
酒井:
「めちゃくちゃいいんですよ!」と永田さん。
夏次郎さん:
知ってくれてる方がいるのはありがたいですね。
酒井:
夏次郎さんの名刺入れを見せてくれた気がします。
夏次郎さん:
昔はオーダーメイドもやってて、ここ(CASAICO)で初めての雑貨の個展をしました。
それまではずっとクラフトイベントに出店していたので、初めてここで雑貨の個展やって終わりました。
雑貨は最初で最後の展示で。
鼻緒・夏次郎の理由。
酒井:
雑貨から、よりによって鼻緒に絞った理由ってありますか?
夏次郎さん:
もともと自分用のを作ってました。
他の作家と“違うことしなきゃいけないな”っていう時に、
こぎんの仲間だったりやCASAICOの葛西さんが「鼻緒だけの展示おもしろいですよね」と背中を押してくれたので、
良い機会だから鼻緒だけにしようと思いました。
壁中に鼻緒が並んでると、面白いと。
酒井:
今の状態ですよね、いやこれ面白い、面白いと思った。
夏次郎さん:
ありがとうございます。
私が自分用も片足ずつ作ってたので、同じように選んで履けるようにしたいと思いました。
百貨店の下駄売り場には『好きな鼻緒と好きな台をカスタムできます。あなただけの』って書いたりしていますけど、
それって履物屋さんが昔からやってきたことなので、何も特別じゃない。
カスタムと謳うなら、片足ずつ、片足ずつやってこそ面白いんじゃないかなって。
酒井:
うん。「鼻緒屋」になってみて、いかがですか。
夏次郎さん:
一つに集中するっていうことは、それについてずっと考えていられるので良かったです。
下駄の形や台の素材・加工まで考えられるのは楽しいです。
あと意外と鼻緒って需要がありました。こんなに見てくれる人がいるんだっていう。
酒井:
じゃあ結果として、鼻緒だけに絞って良かったって感じ?
夏次郎さん:
そうですね。
酒井:
展示は一年に何回ほど?
夏次郎さん:
1年に2~3回
酒井:
CASAICOさんで?
夏次郎さん:
CASAICOさんは2年おきですね。
あとは都内とか、その都度お話しをいただいたところ。
今年は大阪の履物屋さんが東京に出店したんです。その時は百貨店内なので平置きなんですよ。
やっぱり、これ(壁中に鼻緒)が本来の姿なので平置きだとちょっと。
酒井:
夏次郎のやりたい とは少し違う。
夏次郎さん:
壁に釘、打ちたいんですよ笑。
皆が鼻緒を手にとって、もどして、とって、もどして……してる様を見てるのが好きなんです。
酒井:
夏次郎とWLK、KYOTO T5、何か一緒にできそうです。
夏次郎さん:
前の年ぐらいに言っていただけると。
1年間かけて100足が限界。今回140なんですけど。
大抵は前の年にお話しをいただいて、1年間頑張ってそこに持っていくって感じです。
来年はもう埋まってて、次の年からまだ予定ないですね。
酒井:
了解です。とにかく壁中に鼻緒が並べられたらいいんですよね?
夏次郎さん:
はい、このスタイルで。
壁中鼻緒だらけ。釘で打てるスペースが見つけられたら、ご一報いただけたらそのために100足作ります。
50でもできるんですけど、この半分になってしまいます。
スペースによっては50でもいいですけど。これぐらいあったほうが。
酒井:
夏次郎好み。
03 に続く
夏次郎商店 Instagram:
@kogin_natsujirou
ギャラリーCASAICO Instagram:
@casai