「日本髪、苦労ばなし」

「日本髪、苦労ばなし」

舞妓さんの厄介ごと

 舞妓さんの日本髪は地毛で結っています。そして大抵の場合一度結った頭は一週間、ほどかずに持たせるので、ご想像の通りその周辺には様々な厄介ごとが生じます。例えば、寝る時、お風呂に入る時、うかうかしていて走らなければならないような状況になった時。そのほとんどが日本髪のせいで少しばかり不自由です。

日本髪と必需品

 寝る時は「高まくら(おまく)」という時代劇でしかみないような枕を耳の後ろに当てて眠ります。木の台にそば殻でできた小さい枕がくくってあるような感じの見た目で、慣れるととっても寝良いのですが慣れるまでが大変。15、6歳というどこでも寝られる年頃だったからどうにかなった、という気がします。地方での宴会やイベントで出張が多い舞妓さんの出張鞄には必ずこのおまくが入っています、忘れたら座って寝るしかない。枕を持ち運んでいる点はアスリートといえるかも。

銭湯通い

 そしてお風呂。実は銭湯通いの舞妓さんは少なくありません。私もお茶屋さんのお風呂ではなく、毎日近所の銭湯に通っていました。これには家のお風呂におしろいや鬢付油が詰まるのが嫌、みたいな理由があるそう。舞妓さんの常連が多い銭湯はもしかすると頭を悩ませているかもしれません……。
 深夜お座敷から帰ってくると、まずおしろいを落として夏は浴衣に軽い羽織り、冬はパジャマの上からどんごろすという綿の入った長羽織を着てお風呂屋さんに向かいます(どんごろすというのは農作物を入れる麻袋のことだと最近知ったのですが、どういうつもりなのかとても気になります)。 
 毎日銭湯に行ってもお湯に浸かることができるのは頭をほどいた日だけで、常は浸かれません。湯気にあたると髪の毛に鬢付油が回ってすぐにべたべたになってしまうためです。なので、滞在時間は5分か10分ほど。縦社会きっちりの花街ではたとえお風呂でも先輩方一人ひとりに膝をついて挨拶をしなければならないので、一年目は大変です。体を洗う時間より挨拶してる時間の方が長い、みたいな愚痴が懐かしい。

日本髪の頭皮事情

 それはさておき、そんなふうに24時間頭に気を遣って生活していて一番怖いのは頭皮のことです。一週間も頭をほどかなければ、もちろん痒いし、痛いし、ほどいた日の抜け毛はおぞましい量。一番負荷のかかる後頭部の頭皮は弱り、5年も結い続けると毛根もなくなるほど……。舞妓さんに強く憧れて京都に来たけど、これにはかなり堪えました。この「おハゲ対策」についてはまたどこかで詳しく書きたいと思いますが、やってはいけないこと第一位は「走ること」です。走ると、束ねてある根元がずれて禿げます。ゆったりとした所作は、頭皮を守るためのものというのが本当のところかもしれません。夢見る女子は強い!

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